9月に入り、朝晩はようやく秋の気配のする心地良い風を感じるようになりました。それにしても、やっぱり今年の夏も暑かった。猛暑のもと日々の業務に勤しんだわけですが、そのなかで印象に残る仕事がありました。8月3日に行われた「リバーガーデン八尾山本」の起工式です。
リバー産業株式会社(河啓一代表取締役社長)が手掛けるプロジェクトですが、河社長の経営哲学に深く感銘いたしました。神事の後の直会で「自然ファースト、人間セカンド、建築計画サード」という自身の基本理念を披瀝したうえで、「土地(自然)と建物が融合し、人間のためのマンションでなければならず、機能性ばかりを追求していてはいけない。家族の絆を強め、家族愛、近隣愛、地域愛を育む居住空間にしたい」と話し、希薄になるばかりの社会の連携を取り戻したいとの情熱がひしひしと伝わってきました。「日本人は聡明で勤勉な国民。古き良き人情を蘇らせる資質がある」とし、マンション開発により〝ハッピーな山本〟の実現を目指しておられます。
開発コンセプトを具現化するキーワードの一つとして用いておられるのが「緑視率」。「目に入る緑が多ければ多いほど人の心は和む。緑豊かな空間を創出して情緒、感性を高めたい」と力強く宣言。その現れが敷地の西側道路の整備です。
西側道路は、これまで子どもたちが水路に落下する危険性があったスポットですが、行政とも連携して整備。農林水産省が選ぶ疎水百選に大阪府内で唯一選ばれ、地域住民からもこよなく愛されている玉串川沿いの桜との一体感を演出するため、道路沿いに桜並木を設ける他、水路を暗渠化しポケットパークも造り、団らんや四季折々の植栽を楽しめるなど安心・安全で快適な環境に生まれ変わらせるそうです。
また、八尾市初の「災害避難ビル」にも指定されています。地震など万一の災害時には、エントランスのオートロックを自動で解除し、近隣住民にも一時的な避難場所として一部共用部分を開放します。このため、極めて希少性が高く大手でもほとんど取り組んでいない「耐震等級2」を取得することにしています。
取材を通じて強く心に残ったのは、単に事業を実施するという事だけでなく、自然や人間への敬意を根本に置きながら、良好な地域環境を産み出すというスケールの大きな思想でした。暑い最中の取材ではありましたが、河社長の経営哲学に触れ、自分自身の五感に涼風が吹き込み、爽やかな気分で現場を後にしました。一日も早い完成が待たれます。
(記事掲載 8月8日付け)
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