「近畿地方には地震はこない」という、根拠のない安全神話はもろくも崩れ去り、震度7という激しいゆれに襲われ、6343人もの尊い犠牲者を出した平成7年1月17日から22年が過ぎた。
阪神大震災の被害総額は約10兆円とされ、都市を襲ったもので世界最大級といわれている。
死因は建物の倒壊、家具や家電品の下敷きによる圧死、窒息死などが83.9%、火災等が15.4%。そして犠牲者の過半数が65歳以上の高齢者だった。被災地は一人暮らしの高齢者が多く、逃げ出すことも困難。家族と同居でも一階に住んでいて、逃げるまもなくおしつぶされた人が多数いた。
その後、日本を襲った地震災害は数多く、特に2011年3月11日に発生したマグニチュード9.0という未曾有の〝国難〟とも言うべき東日本大震災による惨状は、記憶に新しく、津波による東北3県の沿岸地域の壊滅・多数の死傷者とともに、福島第一原子力発電所の事故など未だに癒えぬ甚大な被害をもたらした。そして、昨年4月の熊本地震、10月の鳥取県中部地震の被害は今も記憶に新しいところだ。
世界で起きる地震の約20%以上がこの日本で発生している。いつでもどこでも日本中で地震が発生する可能性がある。災害に対する備えの基本は「自助・共助」であり、そのウエートが9割だという。公助は最終最後の一割に過ぎない。
地震国に住む心構えの第一は、自分の家と室内の耐震性を高め、自分の家から火災を出さない、死傷者を出さない備えだ。隣人を助けることができるのは隣人だけ。「自分の家や家族、隣人、町は自分たちで守る」の精神が求められる。
真の防災とは、インフラの耐震化などを最大限尽くした上で、「被害者にならず、加害者にならず、傍観者にならない」という〝一人ひとりの心がけ〟と言えるだろう。
今後高い確率で発生が危惧される南海トラフ地震に対して「不断の努力と備え」こそが被害を最小限に食い止める方法だ。
そして、国民が安心して暮らせる社会基盤を整え、その生命と財産を守り、不安を取り除くことは最大にして最重要な国の〝責務〟であり、その一翼を担うのは我が建設業界にほかならない。
震災経験した兵庫は〝3つの視点〟のもと
阪神・淡路大震災後の復旧・復興において、被災自治体として重要な役割を担った兵庫県は、元気で安全・安心な兵庫を目指して社会基盤整備を推進している。「備える」「支える」「つなぐ」の3つの視点のもと、緊急かつ重要な事業を計画的・効率的に実施していくこととしている。
まず「備える」は、自然災害に備えるということで、防災・減災対策の強化を図る。そのなかで、近い将来発生が危惧される南海トラフ地震等に対しては津波対策等を充実。「津波防災インフラ整備計画(平成26(25)~35年度)」のもと、概ね10年間で津波対策を完了させる。
緊急かつ重要な事業は平成30年度までの5年間で終わらせる。内容は▽レベル1津波対策(発生頻度が高い津波への対応)=防潮堤の整備、老朽化対策等▽レベル2津波対策(最大クラスの津波への対応)=防潮堤の越流・引波対策(基礎部の先掘対策)、防潮堤の沈下対策等。このうち防潮堤の沈下対策の概要は、防潮堤等の機能を維持するため、津波が越流しかつ地震動による基礎地盤の液状化により防潮堤の沈下が著しい箇所で、地盤改良による沈下対策を実施するもの。防潮堤沈下対策工事としては、平成26年9月から先導的に実施してきた尼ロック(尼崎閘門)西側の工事が県内で初めて完成している。
他にも、頻発する風水害に備える総合的な治水対策や土砂災害対策に取り組む。土砂災害対策では、平成26年8月豪雨災害を踏まえ、土砂災害警戒区域の総点検を実施するとともに、その結果をもとに、「第2次山地防災・土砂災害対策5箇年計画」を拡充し、砂防えん堤等による予防対策を強力に推進する。
次の「支える」は、日常生活や地域を支える社会基盤の充実を図るもの。地域の交流を支える道路整備として東播、阪神、揖龍の各箇所で南北道路の整備を図る他、日々のくらしを支える道路整備は「新渋滞交差点解消プログラム」に基づき渋滞交差点(70箇所)を5年で半分に減らす。
また、都市の活力を支えるものとして安心・快適な都市基盤の整備を進め、その一環として阪神電鉄鳴尾駅付近高架本体工事(西宮市)、山陽電鉄西新町駅付近高架本体工事といった連続立体交差事業を推進している。
「つなぐ」では、次世代につなぐ社会基盤の形成を図る。高規格幹線道路等の整備(ミッシングリンクの解消)に力を注ぎ、山陰近畿自動車道浜坂道路など広域交流や産業発展につなぐ基幹道路ネットワークの充実強化を進めるとともに、港湾の機能強化・利用促進を図る。
更に、「ひょうごインフラ・メンテナンス10箇年計画」に沿って計画的・効率的な老朽化対策にも全力を投入する。橋梁・トンネル等の土木構造物は5年ごとに点検。損傷等がある要対策施設は、概ね10年以内に対策を完了、要対策施設のなかでも特に損傷等が著しい施設は、概ね3年以内に対策を完了することとしている。