大阪労働局は十九日、新名神高速道路建設工事における相次ぐ重大な労働災害の発生を受け、大阪労働局(田畑一雄局長)は府内で施工する同工事の全現場(五十六現場)の現場代理人および兵庫、京都各一現場を含む計六十二人を招集し、緊急の安全管理指導を行った。
大阪市中央区森ノ宮の大阪中央労働総合庁舎で行われた緊急安全管理指導では、まず小島敬二労働基準部長が労働災害防止対策の徹底について話し、その中で「今月十二日に発生した新名神・箕面とどろみICランプ橋の足場解体中に発生した弱冠十九歳の若者の転落死亡事故は極めて由々しい事態。六月にも鉄板の下敷きになる死亡事故が発生している。これらは痛恨の極みであり、本日は対応策をお示しするが、関係者の労災防止への更なる努力を求めたい」とした。
この後、綿貫直労働基準部監督課長が新名神の現場に対する七月三日から同二十日にかけて実施した緊急立入調査についてその結果を公表。
さらに、石井聡同部安全課長による元方事業者の労働安全衛生法に関する措置や、小野祥二安全課安全専門官の安全管理の基本についての解説があり、重大災害の続発に改めて警鐘を鳴らした。
小島労働基準部長は、取材陣の質問に答え、「今回のような特定の工事に関わる緊急指導は労働局で初めてのこと」とし、さらに大阪府内の事故の増加の原因について「建設業界の人材不足という声もあるが、加えて安全管理も含めて首都圏へ多くの人材が投入されている東京五輪の影響もあるのでは」と語り、また、今回の指導については「現在行われているNEXCO西日本の調査の推移を見て、労働局として今後ともフォローしていきたい」とした。
7月の調査では法令違反現場が半数近く
目立つ元下間の〝コミュニケーション不足〟
新名神高速道の現場では、昨年四月に神戸市で十人が死傷(二人が死亡)する重大災害が発生し、その後も箕面市で橋梁支保の倒壊事故、今年六月には鉄板の下敷きになる死亡事故など事故・災害の発生が続発している。また、この度の転落死亡事故についてネクスコ西日本は、高槻ジャンクション(JCT)から神戸JCT間の鋼橋上部工工事について工事を一時中止し、事故が発生した足場解体作業の作業手順及び墜落防止にかかる安全点検を実施している。
大阪労働局では、七月に新名神高速道路工事現場を含む府内二百三十二カ所の建設現場に立ち入り調査を行い、そのなかで全体の四六・一%にあたる百七の建設現場で法令違反を確認。とりわけ、元請による下請への指導不足に関する違反が九十一件と法令違反の八五%を占め、元請・下請間のコミュニケーションが不足している実態が浮き彫りになっている。
同調査は、大阪府下で今年既に死亡災害が二桁になり、災害の増加傾向に歯止めがかからない緊急事態となったため、急きょ追加対策として実施したもので、緊急立入調査結果とともに、今回の異例とも言える緊急指導を踏まえて大阪労働局では、今後も大阪ゼロ災運動を積極的に展開し、災害の撲滅に全力を傾ける方針だ。
なお、新名神高速道路では、高槻ジャンクション・インターチェンジ(JCT・IC)~川西ICまでの間(延長二十六・二㌔)が、十一月に開通できる見通しが立ったことが今月一日に公表されている。