【偏見排し「能力」引き出せるかが勝負】
二〇一七年卒新卒採用が終了したものの、次期の準備に息つく間もなく取り組んでおられる頃ではないでしょうか。中にはいまだ採用継続中の企業もいらっしゃると思います。
ここ数年、就職・採用活動開始時期は毎年変化していましたが、今年は最も短い期間でした。その影響で、三月に広報活動が解禁するやいなや、エントリー受付、会社説明会予約、ES(エントリーシート)などの書類受付が一挙に重なる状態に陥りました。つまり六月から採用選考活動開始という経団連の指針は実質機能しておらず、前年度は段階的に分散して進んでいた選考ステップが、三~四月に一気に集中したのが特徴の一年でした。結果的に、学生はES作成に時間をとられ業界研究や企業理解を行う時間が短くなり、有名企業や大手企業に応募が集中した結果、中堅・中小企業にとっては厳しい環境となりました。次年度二〇一八年卒も同期間での就職・採用選考スケジュールが経団連指針や政府からの通達で決定しています。
さて、新春を迎え一月下旬から、二〇一八年卒を対象としたインターンシップが各業界で予定されており、現在三年生・院一年のシューカツムードは一気に高まるでしょう。そして三月、高度人材の内定者獲得競争の幕が切って落とされます。売り手市場は今後も続くと見込まれており、早めの母集団形成(自社の求人に興味や関心を持っている学生を集めること)が成功の鍵となるでしょう。
一方で、今年は「大卒ゆとり世代」の社会参画が始まった二〇一〇年入社から八年目となります。大学でキャリア支援に携わる私は、教員や企業の人事の方々から様々な否定的ご意見を頂いてきました。
例えば「受け身姿勢が目立つ」「競争を避けたがる」「精神的に弱い」「突出することを好まない」「自分勝手な自己主張はできる」「丁寧に育てたはずなのに、ひとり立ちを目前に突然転職される」などです。そこからは、企業の選考方法の見直し、人材育成と定着に対する課題が切実に伝わってきます。
組織と従業員、双方の利益の貢献に携わる者として、将来日本経済を支える労働者となる子ども達への「教育」の抜本的改革・再編には大いに期待しています。ただ、この世代の若者は本当にマイナス要因ばかりなのでしょうか。
以下に、ゆとり世代の特徴をあげた上で、見方を変えてまとめてみました。
《特徴》①手っ取り早く成果をあげたい②失敗を恐れ、指示を待つ③自分の成長につながる事しかやりたくない④褒めて育つタイプと豪語する(叱ると萎縮)⑤プライベートを最優先する
《捉え方》①結果を急ぐ傾向。つまり非効率を無駄と捉えており、経験さえ積めば効率的に成果を工夫するようになる②リスク管理意識の高さの表れ。そもそも安全で確実な成功などめったにないことを知れば、リスクを取ってでも行動することの醍醐味を味わえる③世間の狭さからくる傾向。広く社会的意義を知れば、成長可能な世界は無限大であることが理解でき、幅を広げられるはず④前置きもなく、いきなり怒鳴る行為は、ほぼ伝わらない。現代の若者は、そのような教育現場で育っていない。この改善がどのように合理的なのかを、根拠と共に示す。「自分で考えろ」は誤解を招くことがある⑤「ワークライフバランス」の都合の良い解釈に一因がある。ワークとライフを別物と捉えるのではなく、両立が人生をさらに豊かにすることへの正しい理解と啓発研修を社内で実施すべき。
このようにみると、ゆとり世代は決して能力が低い訳ではないことを再認識されるはずです。彼らはアイデアも知識も秘めていますが、出し方、行動のしかたや程度がわからないだけなのではないでしょうか。現代の育成現場において、もはや我々世代の常識が通用しないことを、某広告代理店の「鬼十則」によって改めて思い知らされました。
さらに新しい価値観を持ったこれからの若者の能力を最大限に活かす人材育成・教育は、もはや企業サイドにも不可欠なのです。そして組織へのコミットが遅れないように、信頼し尊敬できる若手メンター(OJT指導、自立支援、メンタルケア、プライベート面を含んだ相談者など)の設置が、全社をあげた人材育成風土を醸成し、結果的に早期離職の予防につなげられる一例かと思われます。
この連載では、貴社の未来を背負う技術者や総合職の安定採用の一助になれるようキャリアコンサルタントの目線で、いまどきの若者を分析しながら解説していきます。ご期待くだされば幸いです。
新居田 久美子(キャリアコンサルタント)