【建設業の知識持たず、誤解抱く若者の立場に立った求人活動を】
先月八月二十四日、NHK「くらし解説 景気好調、それでも上がらない賃金」というニュース解説番組を目にしました。それによると、二〇一七年四~六月期GDPの年率は四・〇%、個人消費も年率三・七%などと、景気が好調であること。そして、六月の有効求人倍率は一・五一倍にまで回復しているにもかかわらず、六月の賃金は〇・六%減少しており、いまだ賃金が上がらないことを問題としていました。
そんな中、建設業の給与が上昇しています。東京商工リサーチが、三月期決算の上場企業二千百七十二社を対象に、有価証券報告書に記載されている従業員の年間の平均給与を調べた結果、建設業は前期比三・一%増で、東日本大震災後の落ち込みから回復した電気・ガス業に次いで伸び率が高かったのです。
しかし、二〇一八年春に卒業する大学生・大学院生の求人倍率は、一・七八倍と前年に比べ〇・〇四ポイント上昇しています(リクルートホールディングス発表)。学生優位の「売り手市場」がより強まり、人手不足が顕著な建設業で求人倍率がますます高まっています。全国の民間企業の求人総数を、民間企業への就職を希望する学生の数で割って算出すると、今年は七十五万五千百人分の求人に対して、学生数は四十二万三千二百人でした。
ご存知のように業種によって需給のバランスは大きく異なります。学生からの人気が高い金融業の求人倍率は前年と同じ〇・一九倍で低水準が続いています。一方で、建設業では三・一六ポイント上昇し、求人倍率は九・四一倍となり、建設業での就職を希望する学生が減って求人倍率が高まったことが顕著に現れています。先行指標である新規求人数は増加に転じ、建設業の景況感は好転し続けています。
日建連は、「再生と進化に向けて―建設業の長期ビジョン」(2015)を策定し、女子の積極採用に向けて「けんせつ小町」を掲げ、また、小学生を対象とした現場見学会の開催など、イメージ・待遇改善などの情報発信に貢献されていますが、大学生には届いていないのではないでしょうか。
たとえば、就職を意識し始める前の高校や大学下位学年生との、早期の交流が鍵となります。建設業が経済・産業の成長に貢献し、災害発生時には早期の復旧から復興までを支える産業であること、ものづくりの楽しさ、国土を創造する面白さを知る機会が、もっともっと必要です。三回生の夏・冬のインターンシップはもちろんのこと、高校・大学の下位学年から企業見学会を実施するだけでも、違うはずです。
また、産学連携のコーオプ教育(大学主体のインターンシップ教育)などを活用し、大手・中堅・中小企業にかかわらず、建設系企業における就業体験プログラムを通して相互理解を深める機会を持つことを提案します。学生に、建設業の魅力、意義を正確かつ深く周知し、仕事の実務ややりがいを丁寧に解説していけば、かつての3K(きつい・きたない・きけん)のイメージは払拭しやすいと考えます。建設業の知識を持たず、誤解を抱く若者の立場に立った、Face to Faceの求人活動を進めていくことが求められています。
最近では「ほめられ世代」とも言われる若者ですが、この名のとおり叱られるとやる気をすぐに失せてしまいがちです。一方で、以外にシビアで冷静に自分の将来を考えてもいます。再度、ここに特徴と対処法をお伝えします。彼らは知識もアイデアも秘めていますが、出し方、行動のしかたがわからないことで上司との齟齬が起き、組織へのコミットが遅れることにつながるのではないかと想像します。
建設業の人材確保のために、いまどきの若者の特徴をつかみ、うまく活用する方法を八回にわたって解説してまいりました。「人間関係」を重視する彼らの人材確保と育成の参考になればと思います。約半年間、お読みいただきありがとうございました。
新居田 久美子(キャリアコンサルタント)
そんな中、建設業の給与が上昇しています。東京商工リサーチが、三月期決算の上場企業二千百七十二社を対象に、有価証券報告書に記載されている従業員の年間の平均給与を調べた結果、建設業は前期比三・一%増で、東日本大震災後の落ち込みから回復した電気・ガス業に次いで伸び率が高かったのです。
しかし、二〇一八年春に卒業する大学生・大学院生の求人倍率は、一・七八倍と前年に比べ〇・〇四ポイント上昇しています(リクルートホールディングス発表)。学生優位の「売り手市場」がより強まり、人手不足が顕著な建設業で求人倍率がますます高まっています。全国の民間企業の求人総数を、民間企業への就職を希望する学生の数で割って算出すると、今年は七十五万五千百人分の求人に対して、学生数は四十二万三千二百人でした。
ご存知のように業種によって需給のバランスは大きく異なります。学生からの人気が高い金融業の求人倍率は前年と同じ〇・一九倍で低水準が続いています。一方で、建設業では三・一六ポイント上昇し、求人倍率は九・四一倍となり、建設業での就職を希望する学生が減って求人倍率が高まったことが顕著に現れています。先行指標である新規求人数は増加に転じ、建設業の景況感は好転し続けています。
日建連は、「再生と進化に向けて―建設業の長期ビジョン」(2015)を策定し、女子の積極採用に向けて「けんせつ小町」を掲げ、また、小学生を対象とした現場見学会の開催など、イメージ・待遇改善などの情報発信に貢献されていますが、大学生には届いていないのではないでしょうか。
たとえば、就職を意識し始める前の高校や大学下位学年生との、早期の交流が鍵となります。建設業が経済・産業の成長に貢献し、災害発生時には早期の復旧から復興までを支える産業であること、ものづくりの楽しさ、国土を創造する面白さを知る機会が、もっともっと必要です。三回生の夏・冬のインターンシップはもちろんのこと、高校・大学の下位学年から企業見学会を実施するだけでも、違うはずです。
また、産学連携のコーオプ教育(大学主体のインターンシップ教育)などを活用し、大手・中堅・中小企業にかかわらず、建設系企業における就業体験プログラムを通して相互理解を深める機会を持つことを提案します。学生に、建設業の魅力、意義を正確かつ深く周知し、仕事の実務ややりがいを丁寧に解説していけば、かつての3K(きつい・きたない・きけん)のイメージは払拭しやすいと考えます。建設業の知識を持たず、誤解を抱く若者の立場に立った、Face to Faceの求人活動を進めていくことが求められています。
最近では「ほめられ世代」とも言われる若者ですが、この名のとおり叱られるとやる気をすぐに失せてしまいがちです。一方で、以外にシビアで冷静に自分の将来を考えてもいます。再度、ここに特徴と対処法をお伝えします。彼らは知識もアイデアも秘めていますが、出し方、行動のしかたがわからないことで上司との齟齬が起き、組織へのコミットが遅れることにつながるのではないかと想像します。
建設業の人材確保のために、いまどきの若者の特徴をつかみ、うまく活用する方法を八回にわたって解説してまいりました。「人間関係」を重視する彼らの人材確保と育成の参考になればと思います。約半年間、お読みいただきありがとうございました。
新居田 久美子(キャリアコンサルタント)