【「内定者フォロー」は無視できない重要なポイント】
 倫理憲章で言うところの選考開始日、六月一日がやってきました。今月の上旬は、大企業の最終面接が続き、最後の追い込みに多忙を極める学生たちです。今年は内定を保持しながら、就職活動を続けている学生が多いように思います。労働市場の好況さを反映して、また、早めの囲い込み傾向が高く、内定保持者が例年になく多いと実感しています。
さて、採用担当の皆様には、これから最後の一山を超えなければならない大きな任務が残っています。内定辞退者を最小限に食い止めることです。今回は、大学での進路指導・就労支援に携わり、大学生の生の声を十年近く聴き続けてきた私の個人的な辞退予防対策をお話しします。
①「内定を出した根拠をはっきりと個別に学生に伝え評価する」=なぜ自分が選ばれたのかに確信が持てないと、勝手に過小評価しモチベーションを下げていきます。手間がかかりますが、しっかりと承認してあげてください。
②「学生との良好な関係を築いておくこと」=不安解消のため、人事担当者や各部署上司などとの食事会や教育機会を設け接触を持つ。人間関係は内定直後から形成しましょう。給与面や働き方のリアルを伝えると安心するようです。
③「職業選択の自由を尊重する」=六月上旬に長期的に頻繁に呼び出し拘束するなどの行為は、明らかに妨害です。「オワハラ」はもちろんのこと「後付け推薦状の提出」も企業評価を下げる要因の一つとなります。
④「当社きってのキラキラしているスーパー社員、象徴的な社長などに会わせておく」=成功者を間近に見ると、士気が高まり、夢が持てます。
⑤「内定承諾書の期限は長すぎてもダメ=③の意見と矛盾するようですが、尊重しすぎてほったらかし過ぎると、これもまた不安なようで。
⑥「職場見学やミニインターンシップなどを実施し、現場に慣れさせておく」=現場をこの目で見る、また社員との交流が広がれば自信につながります。
⑦「親をもファンにさせる」=親に反対される事態を避けるためです。家庭訪問をするなどの事例を取り上げたニュースをみましたが、現実的ではないでしょう。ファンは無理でも、学生本人の志向を掴み、なぜこの会社なのか、を語れるよう情報提供をしていきましょう。
⑧「内定者同志の結束を高める仕掛けをする」=一例として、内定者懇談会をマメに開催し、その後のライングループ上での意見交換は良い刺激になるようです。ただ、マイナス意見が伝播する危険性もありますので、学生目線であまり評判がよろしくない状況をさらすことは、不本意でしょうが避けたほうが無難です。
このように、内定を出した学生を確実に入社させ、入社後の新人教育にスムーズにつなげていくための最終段階「内定者フォロー」は、決して無視できない重要なポイントです。
新居田 久美子(キャリアコンサルタント)