【心惹きつける取組みと「選考基準」の明確化を】
 三月一日、企業の広報活動がスタートしました。リクナビの合同企業説明会(インテックス大阪)には一日で約二万人もの就活生が参加したようです。三月上旬のあいだに、それぞれの大学構内においても合同企業説明会が開催され、シューカツは一気に進みます。中小企業数が九九・七%を占める我が国ですが、大企業に希望が集中した昨年の結果をみるとその動向が気になるところです。今年も同様に、六月選考活動解禁を待たずに三月から選考を開始し、内定出しは五月から六月がピークになることが予想されています。
文部科学省と厚生労働省が発表した就職(内定)率状況調査によると、二〇一七年三月に卒業を予定する大学生における、昨年十二月一日時点の就職(内定)率は、前年同期比で四・六ポイント改善の八五・〇%と過去最高を更新していることが明らかになりました。リーマンショック以前を上回る売り手市場であることは明らかです。
六月の時点で内定率が一気に上昇することを鑑み、残り数十%の未内定学生とシューカツを終了しない学生を対象に、夏に企業説明会を実施するところもあります。
さて、そもそも良い採用、失敗しない採用活動とは何でしょう。
その判断基準を三つに分けることができます。▽基準1=不足している、あるいは不足すると予想される人材を獲得できているか▽基準2=人材が企業にコミットし、満足感を持って定着できているか▽基準3=その採用により組織全体が活性化しているか、です。
そもそも、採用とは、魅力的なターゲット層にエントリーさせる「募集」。その募集段階で出会った学生の中から自社に適した人材を選び出し内定を出す「選抜」。内定者に辞退される、あるいは早期退職を回避するために、全社あげてフォローアップしていく「定着」の三段階を指します。売り手市場の今、コストをかけず満足度をいかに高めるかが各社の大きな課題でしょう。
就職活動終了者に「就職先企業を選ぶ際に重視した点」について集計したデータを見てみましょう。昨年八月に発表した「キャリタス就活2017学生モニター調査結果(㈱ディスコ・キャリタスリサーチ)」によると、1位は「社会貢献度が高い(三一・六%)」でした。2位は「職場の雰囲気が良い(二八・〇%)」、3位「仕事内容が魅力的(二七・二%)」、4位「将来性がある(二七・一%)」、5位「福利厚生が充実している(二五・五%)」などが並び、短期決戦と言われる中でも、就職活動を通じ、しっかりと企業研究を進めた上で決断をした様子がうかがえます。この視点に応えるためには、自社が世の中のどのような問題解決に貢献しているのか、そして今後の挑戦的課題などを明確に伝えることで、仕事内容がイメージしやすくなります。いかに共感させられるかが興味を惹きつけるポイントになると思われます。
ところが、実際に内定報告に来てくれる笑顔の学生からは「ちゃんと自分をみてくれたから」「僕のことを理解してくれたから」「人(社員)で決めた」「雰囲気が自分と合ったから」などの声が聞かれます。(大丈夫かな…)と思うことは正直ありますが、意欲につながったことは間違いないようです。どこでそう感じたかをさらに聞くと、「説明会で私の聞く姿勢を評価してくれた」「面接試験のフィードバックをしてアドバイスをくれた」「選考の合間に面談を実施して、不安や悩みをフラットに聞いてくれた」「担当者だけでなく皆さん馴染みやすかった」「気さくに趣味などの雑談ができた」「すごく親切にしてくれたからお役に立ちたい」=cd=ba52などの意見が目立ちました。『オンリーワン』で育った彼らにとって自分を特別な人材として扱ってくれていると感じることが、学生の心を惹きつける一つのキーワードになりそうです。
この実情を踏まえると、より失敗しない採用活動にするためには、①若者ツールの活用(ホームページや企業Facebookなどをスマホ対応にするなど)、②ターゲットが集積する大学・学科に直接アプローチし窓口を開く、③インターンシップを活用し、早めに出会う、④人事以外の部署との連携協力を強固にしておく(職種ごとの面談者を確保しておく)、⑤若手リクルーター(単独で学生にアプローチする入社一~五年程の現場社員)の設置と育成。この五つを自社状況に合わせて導入されることをおすすめします。さらに適切な「選抜」のために、自社が求めるコンピテンシー(成果を生む望ましい行動特性)に近い学生を見極める「選考基準」をあいまいなものにせず、明確にしていたかを再度ふりかえってみることです。採用担当者の間でしっかり共有し、評価方法を統一しておくこと。これらの対策により貴社の宣伝力・惹きつけ力・選抜力の底上げが可能になると思われます。
さあ、就活2018は、どのような出会いが待っているのでしょうか。楽しみですね。
新居田 久美子(キャリアコンサルタント)